射影方式のちがい - 屋根の上

射影方式のちがい  

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 魚眼=超広角という誤解は自分含め多くの人がしていると思う。普通、カメラが持つ画角は60度付近までで、それ以上は、この画像左上のような画面周辺で引き伸ばされたような歪みが生じます.180度付近は無限大に引き伸ばされて,画面に収まらない歪みになります.そこで、180度全天を一枚に収めるために考えられたのが、魚眼です。そのため、魚眼$\neq$超広角 という理解です。
 じゃあ通常のレンズと魚眼レンズがどう違うのかという疑問は、射影という言葉で説明できます。射影というのは影を射ると読みますが、立体物が地面に落とす影を想像してください。普通3次元の立体物は2次元の平面には完全に記録できないため、ある1方向から見た影(像)のみを記録するわけです。これがいわゆる写真を撮る行為に相当します。問題は、どのように映す(射影する)かによって見え方が異なるということです。例えば、平らな面に影を落とすのか、凸状の面に影を落とすかによって像の見えは異なります。それを大きく分けて超広角、魚眼などと呼ぶわけです。具体的には、通常のレンズと魚眼レンズはそれぞれ立体物を平面、球面に投影(射影)します。よって、同じ画角を想定したシーンでも歪んだパース、真っ直ぐなパース…という様々なケース(射影方法)が考えられます。この記事では、それらを描く上でのヒントと特徴を扱い、ロジカルに説明します。しかし、結論から言えば、画角90度以上でないと射影方式は考慮しなくていいです。なので、時間を無駄にしたい方は次へどうぞ。

 まず高校の物理に戻って、被写体の位置を$a$、スクリーンの位置を$b$、焦点距離を$f$とするとレンズの公式は、\[\frac{1}{a}+\frac{1}{b}=\frac{1}{f}\tag{1}\]$a\gg b$のとき、左辺の第一項が省けて、\[\frac{1}{b}\sim\frac{1}{f}\tag{2}\]なので スクリーンの位置$b$は焦点距離$f$で近似できます。ここで(図1)レンズの前方$f$の位置に仮想的なスクリーン2を設置すると、中心射影のモデル(図2)が得られます。
parth0.png
図1
parth1.png
図2
 Oがレンズの中心で、Qが被写体です。スクリーンに記録される像は直線OQとスクリーンの交点のqになり、2次元で考えれば図3のようになります。
それぞれのパラメータは$y$がスクリーンに記録される像の大きさ、$\theta$はカメラの光軸とQのなす角、$f$はカメラの焦点距離です。続けて他の射影方式も紹介していきます。




・中心射影方式(通常レンズ)
parth2.png
図3
 図から、\[y=f \cdot \tan\theta\]となります。このように記録する方式を中心射影方式と呼び、被写体Qの形と像の形を相似形に保つ撮影方法(透視投影)です。ようするに、いつも描いてる1点、2点、3点透視投影法です。像が歪まないという特徴から、一般的なレンズ(望遠レンズ、標準レンズ、広角レンズ)で使われている方式です。この撮影方法は画角が大きくなる($\theta$を$90^\circ$に近づける)とQがスクリーンに収まらない角度が現れます。スクリーンに収まる最大の角度が製品固有の画角の限界になります。センササイズと焦点距離の限界から製品としては、$\theta=57^\circ$(全画角$114^\circ$)程度までで使用されているそうです。

・等距離射影方式(魚眼レンズ)
parth3.png
図4
 図から、\[y=f \cdot \theta\]となります。スクリーンは赤い部分になりますが実際にスクリーンがカーブしているわけではなく、このカーブを平面に広げることで像が得られるといったイメージです。Qは太い赤線で、大きさ$y$で記録されます。上の中心射影と違うところは全天$\theta=90^\circ$(全画角$180^\circ$)を記録できることです。このために魚眼レンズに採用されています。他にも全天を記録できる方式はありますが、これが一番製品として多いそうです。

・立体射影方式(セミ魚眼レンズ)
parth5.png
図5
 前のと比べて図が少々複雑になりますが、図より\[y=2f \cdot \tan\frac{\theta}{2}\]となります。遠心角、中心角の関係からカメラの反対側に現れる$\frac{\theta}{2}$を使うことで、中心射影と違って全天を撮影することができるので魚眼の分類になります。ただし、平面に射影しているのでセミ魚眼としました。平面に映しているのに全天が撮影できる中心射影の進化系みたいな奴です。
 この方式では中心に比べて周辺($\theta$が大きいところ)の像が拡大されるという特徴があります。なので、防犯カメラに使われたりします。また、人の眼に近い射影方式です。


 
以上まとめると、下の表1のようになります。
レンズの種類 射影方式 特性式
一般的なレンズ
(望遠レンズ、標準レンズ、広角レンズ)
中心射影 f tanθ
魚眼レンズ 等距離射影
等立体角射影
正射影
f θ
2f sin(θ/2)
f sin(θ)
セミ魚眼レンズ(ヒトの眼) 立体射影 2f tan(θ/2)
表1
面白いことに、射影方式は式が陽に書けるので、相互に変換可能です。例えば、魚眼レンズ->通常レンズへの変換を考えます。等距離射影と中心射影を仮定すると、\[y=f\theta\]\[y'=ftan\theta\]から、$\theta$を消去し、\[y=ftan^{-1}(\frac{y'}{f})\]を得ます。よって、$y$が$y'$で表せたので、魚眼->通常レンズへの変換ができることがわかります。これは、photoshopなどに付属しているレンズ補正の基本原理です。射影公式が分かっていれば自在にレンズ効果を除去できます。逆の、通常レンズ->魚眼も同様に$y'=ftan(\frac{y}{f})$なので、透視投影で書いて、後からレンズ補正などで魚眼っぽく見せることも可能ですね。
また、この特性式から下のような投射図が描けます。投射図とは空を地面と水平に均等に分割したときに空を撮影した、そんなイメージです。
170123_c1.png
170123_c2.png 
図6
 
これは対応した射影方式の写真などに重ねることで画角を割り出すことができる定規みたいなもので、絵を描くときには空間の物差しになります。実践的な使い方では、図7(b)のように絵のパースに合わせて画角の目安としたりすることでしょうか。。Ryotaさんが『画角のススメ』なんて教本を出しているように使い方は色々あるような気がします。話を戻してこの定規、等距離射影は同心円のピッチが等間隔になっているのに対して、立体射影は中心に比べて周辺の方が大きくなります。カメラの立場から言えば、立体射影では中心を圧縮して周辺の解像度を上げることができるというメリットがあります。
 さて、問題児の中心射影ですが思ったより簡単です。中心射影では全天の写し込みができず120度付近が限界であることは先に書いた通りですが、仮に180度を描いた場合は図6(a)のような極端な図になります。実際の所はスクリーンが有限なので赤い部分(120度~)は写らないので無視します(図7(c)).センサに合わせて拡大してあげれば図7(a)になり,これが中心射影での投射図となります。画角が上がると周辺において同心円のピッチが拡大します.広角領域での画面周辺の歪みはこれに由来しているんですね.

170123_c3.png 
図7
 まとめると,カメラなどの通常レンズでは中心を強めに圧縮すれば良いようです。また、画角90度以下ではそれぞれの射影方式の違いは現れにくい。90度以上の画角を扱う場合には画角の圧縮を考慮してあげればより効果的に描けるんじゃないかとおもいます。でもphotoshopとかで加工補正できるので透視投影極めた方がいい説
下の文献に実写での比較などあるのでぜひ。

参考文献
1.塩山忠義(2010)『画像理解・パターン認識の基礎と応用』<pub.maruzen.co.jp/realize/search/sample/RLB220490.pdf>トリケップス pp.1-3.
2.「キャノン技術レポート」<web.canon.jp/Camera-muse/tech/report/2010/11/>(2010.10)
3.「パノラマ撮影に最適なレンズは?-射影方式」<shaolin.blog.shinobi.jp/写真撮影/パノラマ撮影に最適なレンズは?-射影方式>(2009)
4.「株式会社フィット FI-085/111」<fit-movingeye.jp/products/optics/consumer_optics/fi_series/fi_02.html>
5. .ai file"170123_ai_aa.png"170123_ai_ab.png"

Posted on 00:05 [edit]

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Comments

遅いコメントですみません;

「中心射影」で検索したら、この記事にたどりつきました。
すっごくためになりました!!!
ほんとスゴイです!!
私も勉強頑張ろうと思います。

URL | 恵 #yl2HcnkM
2016/02/17 19:24 | edit

とてもわかりやすかったです。ありがとうございます

URL | もりりん #-
2016/07/20 23:05 | edit

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